空の表紙 −天上のエクレシア−


――――――――馬車の中


奇声を発しながら
怪しげな鳥が叫ぶ、鬱蒼とした森


昼だというのに
光は差す事なく
木々は何かに捩じ曲げられた様に
奇怪な姿で枝と根を延ばしている

蔦が絡み合い
アーチ状になった植物

トンネルの先には
闇に包まれた穴が見えた

マドゥー邸の地下から
転送輪に運ばれた馬車は
その内臓で作られた様な
鮮やかな桃色の通路を進んで居た


「薔薇のアーチが美しいなルビナ!!
ほら!城の入口が見えて来たぞ!!」



(城…?

ピッキーノが指し差すそこを見るが
暗く口を開いた洞窟にしか見えない


「いやあ!
ここの封印を解くには苦労したよ!
悪鬼共が山と
襲い掛かって来たらしくてね!
…ここに送られた術士、
兵隊共の殆どが
恐怖で死んでしまった!

しかしフリートがそれらを薙ぎ倒し
封印を解いたのだ!」



「……あれは神殿に近付けない為の
偽の映像…。
『本』の力と似た物ですね」


ルビナは無意識に言葉を発する

「…こんな…恐い所よく平気で…」


「…悪鬼など
私は恐れない
…本当に恐ろしいのは…」


フリートは呟き馬車を止めた




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