空の表紙 −天上のエクレシア−
あれは『大戦前夜』


竹で組んだ高い柵


山間の集落で飼っている山羊達が
各々草を食む

ジーク率いる小隊は王弟の護衛
洞窟前で待機していた


「奥までいったのはガーネットか」

誰に言うともなくジークが呟く


横に偶然居合わせた兵士が
それに答えた

カシャリと兜から緑の目だけを覗かせる


「ああ。
ガーネット小隊長は
さっき王弟と一緒に
何人かで入ってったー。
オレ達はここでお留守番みたい

天気もいいし
ゆっくり景色でも眺めてよーよ」


そう答えた男
体は大きくはない
女の様に整った顔をしている

だが鎧の体への付き方で
かなり鍛え上げたのが見て取れた


「我流か 見ない顔だ」


「野良の闘技試合で遊んでたら
王様にスカウトされちゃったあ
一応小さい時から正統剣術は少し。
でも後は喧嘩で鍛えた感じかな。
えへへー」


「俺の弟がお前位だ
奴がもし近衛団に入れば
顔を合わせる事になるだろうな宜しく頼む」


差し出された手を握り握手する


「うん!でもいーなー。
オレひとりっ子だから羨ましい
弟さん、なんて名前?」


「アクアスだ」


「あんたの名前は?」


「ジーク 
ジーク・F・ルードだ」


「オレはヨピ そう呼んでよ。」


「ふ…渾名か。」

「うんー。
昔から町とかで遊んでて
皆こう呼ぶから。
ただし
あんま知らない女に呼ばれたら
ぶっ飛ばすけどね。」


「…女を殴るな。」


「あはは。冗談だよー。…て
アンタでっかいなあ!」


ヨピの軽く2倍はあるだろう
鱗形の板を敷き詰めた銀鎧
背中にはその巨躯と同等の大剣


「それ、
抜刀する時失敗したら死ぬね
首取れる。」


ヨピが兜を脱ぐと
短い金髪が現れた
『あち』と汗を拭きながら
じっとその剣を見つめる


ジークはスラリと
それを流れる様に抜き彼の前に差し出した

「振ってみるか」

「え。いいの!?」

「かまわん」





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