空の表紙 −天上のエクレシア−

―――――――――



「アクアス遅いねえ!

ちょっと
寒くなってきちゃった
サリュ、へいき?」



「うん」


そうは言うが
サリュは膝丈までの、麻の服ひとつ

何より足の方が心配だ

ガラスや枝でやったのか
あちこちに裂傷が酷い




水銀柱の、あかりの下

噴水の縁に座るルビナに抱っこされ
寝息を立てていたユピが
もぞもぞと動き出した



「う…ううん…サリュ様ぁ…。
はっ!ここは?!」

ユピが飛び起きる


「っっっ!サリュ様あああっ!」

おいおいと泣きながら
サリュの膝に縋り付くが
横のルビナに気付いて
我に返る


腰の剣に手を当て
ルビナ睨み付けた

「キサマ何者だ!
サリュ様にお手を触れるで無い!!」


「ゆぴ!ルビナはいい人だよ。」


「う!!」

…サリュ様に怒られてしまった
…初だ…

しばしウットリするが
慌てて膝を折る


「ルビナ様ご無礼を!
私はサリュ様仕えのナイト!
ユーピィルと申す者!」


「あはは!いいよいいよ!
んっと、これから家来ない?
もう遅いし…ご飯も食べなきゃだし!」


言われた瞬間サリュのお腹がなる

サリュは驚いて
自分のお腹をさわった


「あははは!
いこいこ!アクアスは
うち良く知ってるし!
ここ居なきゃ家に
一緒行ったってわかるよ」


「ここ、どこなんだろう。」


「まっかせて!うちに付いてきてね!」




そうして
景気良く歌を唄いながら
公園を出る三人


草むらに黒い影が蠢くのも知らずに――。




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