空の表紙 −天上のエクレシア−



―――――――――月

街から遠く離れた
岩の荒野
どこかで狼の
遠吠えがする。


白い光の下
小さな赤い焚き火を囲む一団は
あの幌馬車

セフィアが焚き火に枝をくべながら問う

「オデッセイ
あの赤い髪のコ
置いてきちゃって良かったの?
ここの皆見られてるのに」


「…あの子は言わないよ。」

片手を付き頭をかしげ
揺れる炎に照らされ微笑むオデッセイ

「ひー。怖い怖い」

確信犯

こんな時の彼はどんな時より
悪魔に見えるとセフィアは思った


−初めて会ったのはいつだったか

ここから離れた北の街で
一座はテントを開いていた

皆あの大戦で焼け出されたりして
いつの間に集まった顔だ
だからお互い詳しい事情も話さないし
聞いたりもしない


彼はある日フラリとやって来て
それから毎日訪れる様になった


長い見事な金髪に
煤けた古い黒外套

客席には座らず
一番奥の暗がりの地べたに腰を降ろす
そして幕が降りるといつの間に居なくなっている


それは一座でも話題になっていた
女性陣ではまた別の、
黄色い声を挙げての話題になっていたが


「地元の人間じゃねえだろ
あの明るい金髪は
もっと南の持ち物だ
ワケアリだな。」と皆の声

数日して皆で声をかけた
この地には身投名所の岸壁がある
しでかされたら夢見も悪いしねと


『舞台には上がりたくない』と言う彼

もったいないと思いつつも
算術が出来ると言うので
興行の会計と
裏でやっていた武器運びの
帳面を任せた



黙々と仕事をこなし
皆とも上手くやって
時には楽しく呑んでいた

でも、
彼の視線は何時も弱く俯いていた

――そして冬。
ある雪山事故の記事が新聞に載った



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