寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
九十一
 レンたちと竜が北区の中を大回りして、中央区に移動を開始する。お兄様とランドル様は鎧を汚して、北区の表通りを通り中央区に向かい、わたし達はお父様とナサたちの体当たりを見ながら騎士を待ち受ける。

 しばらくして"ウオォォォーーン"ルフの遠吠えが聞こえる。お父様とナサたちは体当たりを止めた。

 次の作戦に移る。

「リーヤ、カヤ、リヤ、親父が吠える耳をふさげ! 他の奴らも耳を塞ぐんだ!」

 ナサの言う通りに耳を塞ぐ。
 お父様はみんなが耳を塞いだのを見て、スーッと息を吸い、挑発する為に"ガオォォォォーーン!"と吠えた。

(うわぁ、すごい)

 前にナサが吠えたときにも思ったのだけど、威嚇の声は体というかお腹にズシッときて動けなくなる。

「リーヤ、大丈夫か? カヤとリヤも?」

 コクコクと首を振り、大丈夫だと三人でナサにこたえると、安心した表情を浮かべるナサ。



 数分後にお兄様達が呼んだ、騎士団が北区の門におとずれる音が聞こえたと、北門近くにいたアサトが合図する。

 それを見てみんな頷き。

 北門に騎士が訪れたと、同時にナサはお父様に飛ばされて、門にぶち当たった演技を始める。
 
「ウググッ……」

 ここでわたしの出番だ。

「ニャ、サ!」

 わたしはナサの名前を呼び、そばに駆け寄る。
 ナサは駆け寄ったわたしを背に隠して、お父様を睨む。

(いま緊張して、ニャ、サって呼んでしまった……ここで噛むなんて……)

「ウクッ、コイツ強いな……ハッ、ハハ」
「フッ、フフ」

 この場にいる、みんな笑ってる……耳のいい彼らにはバッチリ聞こえたんだ、恥ずかしい。

「亜人隊、ナサ。平気か?」
「ああ、なんとかな」

 ナサが笑いを噛みしめるところに騎士が駆け寄ってきた。その騎士はミリア亭で見たことがある人物だった……作戦通り、皇太子が命令したのか、北門にやって来たのは第一部隊長だった。

(アサトさんたちの言う通り、第一部隊が来たわ……そうなると、遅れて皇太子もくる?)

 連絡係の騎士は魔導具使い、連絡を取る。
 
『北区にモンスター現れる。亜人隊は苦戦、手や空いたものは北区にこられたし』

 と、話す内容をナサはコッソリ、わたしに教えてくれた。

「それで、いま第三部隊は中央区に入った亜人を北区に戻す役目で、第二部隊は国王、王妃、皇太子、招待した貴族達を守っていて、第四、第五はどちらかの助っ人と、北門以外の門の警備にまわっているらしい」

 チャンスだ、竜の片割れを探すのはいまだと、ナサはお父様を睨みながらレン達、中央区に入った友に伝えるために吠えた。
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