今宵、幾億の星の下で
「死んだおかげで、色々わかったことがある」

拓馬は続けた。

「保険金額が変わっていたらしい。おれの知らないところでね。定期もいくつか解約していて……」

自身の金は当に使い果たし夫婦共同の貯金にも手を出していた。


「ニュースで知っているだろうが、君の元彼。真梨奈の運転手にそそのかされて、おれを殺そうとしたらしい」


航大と真梨奈は共犯であった。


拓馬を殺し保険金を手に入れ、航大と折半すると口約束をしていたらしい。

だが結局、拓馬自身は死んでおらず保険金も下りることはなかった。

「報道はされていないがね。真梨奈も殺そうとしていたらしい」
「!」

金を手に入れ真梨奈を殺し、独り占めして逃げようとしたらしいが、金は手に入らず。
事件とのギリギリのところであったが、生きていた拓馬と改めて話し合い、出来事は闇に葬られた。


「真梨奈の……元妻の親父さんには、もう関わるなと縁切りされたよ。まあ、娘が保険金殺人で逮捕されることを防いだんだろうな」


夫を殺してまで、ひとりの『架空』推しキャラに有り金をすべて貢ごうとしてた、真梨奈。
そんなことがスクープされたら、真梨奈の父親も社会的に抹殺を受けることは必須だろう。


「君の存在も公になったが、おれは君の云う悪い人だからな。裏取り引きをしたのさ。相殺でなかったことにする。それで話しをつけた」


真梨奈は両親の元でひっそりと暮らしている。
おそらくもう、そこから出られることはない。

すべてを話し終えた拓馬は、ポケットから宝石の収納ケースを取り出すと、玲の前で開いた。
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