生きづらさ
第二章 紅葉と陽光

映画①

映画の内容は冒険ものだった。

男性2人と女性1人が島に隠された宝を発掘しに行くという内容でここまではよくある話だった。

他の映画と違うところは宝が発見されるでもなく、誰かと宝をめぐって争うでもなく、恋愛関係に発展するでもなかった。

ゾンビや恐竜も出てこなかった。

実は宝を探しに行くというのは大義名分で3人のそれぞれの目的は自分がいる場所から一旦離れたかったのだ。

3人にはそれぞれの生活や人生があった。

なぜ今いる場所から離れたかったのかは明確だ。

知らない者同士で生活をし自分の中に押さえ込んでいた感性を確認したかったのだ。

結果的にそれはあまり意味を持たなかった。

なぜならば集団で生きるということは、相手がいることで成り立つからだ。

3人はできる限り素直に自分の話をした。

相手の意見や考えを否定することも共感することもなかった。

1人が話している時は2人が内容を真剣に解析した。

3人はそれぞれの考えを尊重し合った。

時折助けを求めることもあったが、できる限り自分で問題を解決した。

干渉もほとんどなかったし、争いもなかった。

嫉妬や恨みもなかった。

3人それぞれがあるかも知らない宝を探した。

それぞれがそれぞれのペースで生活をした。

無人島だからこそ誰からも干渉されなかった。

情報も進んで共有はしなかった。

価値観の強要もなかった。

朝は太陽で目覚め夜は星空を眺めながら眠った。

魚を食べる人がいれば木の実を食べる人がいた。

狩りをして捕まえた動物を焼いて食べる人もいた。

それぞれが今までの人生の糧を頼りに生活した。

彼ら達は最後に何を得たか。

得たものと言えば無人島での生活の知恵と何にも縛られない時間だった。

社会に戻ってそれがどう活かされたか。

それは本人達にしかわからないものだった。

言葉で表現するには難しいとわかっていた。

だから自分の心の中だけにしまった。

全てがどうでもよく感じた。

名誉や地位が最終的に何をもたらすか知っていたが、特に興味も持てなかった。

人間社会で起こっている多くのことに対して興味すら持てなくなった。

それに対して悲しさや寂しさはなかった。

少しでも人間らしさというものを肌で感じたひと時だった。
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