生きづらさ

アナウンサー②

僕はその映画を見終わった後、極度の憂鬱を感じた。

その映画は僕の今までの人生を全て否定しているようにも感じたが、きっとそういった主旨で作ったようにも感じなかった。

しばらく沈黙が続いた。

彼女が缶ビールを持ってきてくれた。

おつまみにシュガーナッツを食べた。

お互いに何かを喋ろうとするが、それが上手く言葉に表せなかった。

しかしそれはお互いにわかっていたので、気まずい雰囲気ではなかった。

僕はスポーツニュースにチャンネルを変え、我々は少しずつ現実へと戻った。

僕は帰ることにし、自分のホテルへと戻った。

帰り道、道路の紅葉はライトアップされとても綺麗だった。

コンビニで缶ビールを買い、公園のベンチで眺めた。

猫が僕の元へ来ると、「ミー」と鳴いた。

「どうしたんだい?ミー」

体を擦りつけ人懐っこい猫だ。

首輪が付いているので飼い猫なのだろう。

ホテルへ戻りシャワーを浴び寝た。

翌日は朝から観光に行くことにした。

地元のテレビ局のアナウンサーが取材をしてもいいかと聞いてきたが、地元じゃないと伝えると申し訳なさそうな顔で去っていった。

お昼は味噌ラーメンを食べた。

歩き疲れたので喫茶店に入り休憩をした。

夫婦で営業をしている店だ。

ミーがいた。

彼女は僕に気づくと近寄ってきた。

飼い主も僕と同じくミーと呼んでいた。

「すみません、人懐っこいんです」とマスターが言った。

気にしないでください、僕がそう言うとマスターは僕の前まで来て煙草をすすめた。

東京から来たと伝えると、良かったら夜ご飯をご馳走させて欲しいと言った。

なんて優しい方なのだろう。

側にいた奥さんも僕に好意を抱いてくれたようで、2人で僕を歓迎してくれた。

18時にお店に来て欲しいとのことで、それまでの間僕は観光を続けた。

18時になり喫茶店に行くと閉店の札が飾られカーテンは閉められていた。

いらっしゃい、奥さんが僕を中に入れてくれた。

海鮮料理以外にもジンギスカンやザンギを作ってくれた。

そんなに僕に気をつかわないでくださいと言ったが、2人は僕を歓迎してくれた。

お店兼自宅なのだが裏の方からドアを開く音がした。

街中で出会ったアナウンサーだった。

彼女は僕をみるなり驚いた顔をしていた。

2人の娘だったのだ。
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