神殺しのクロノスタシスⅣ
違う。それは違う。

僕の家族は、この人達じゃない。惑わされるな。

僕は違う。そのはずだ。

僕の家族は、一人だけだ。

そう、僕には家族がいたはずなんだ。それはこの人達じゃない。

ちゃんと覚えている。僕の家族の名前を。

僕は、彼女と一緒にいるのだ。

姿は見えないし、声も聞こえないけれど、彼女は確かに僕の中にいる。

例え記憶喪失になっても、それだけは忘れることはない。

彼女の記憶だけは。決して。

僕には既に、家族がいるのだ。

だから僕はこんなところで、知らない人と、仲良く家族ごっこをしている必要はないはずなのだ。

それなのに、何故僕はここにいる…?

…分からない。

思い出せない。

何か、やらなきゃならないことがあったはずなのに。

僕には、僕の知らない別の自分が…本当の自分がいるはず。

それがどんな自分なのか、思い出せないだけで。




本当の僕は…一体何者なんだ…?



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