神殺しのクロノスタシスⅣ
茨の指輪が、二人の指から消えるなり。

「良かったぁぁぁ、二人共〜っ!!」

シルナが、令月とすぐりに飛びついた。

おっさんに抱きつかれんの、すげー嫌だろうなぁ。

「羽久が私に失礼なことを考えてる気がするけど、今は嬉しいから別に良いや!」

あっそ。

「二人共…大きくなったね…!成長したね…!」

親戚のおっさんかよ。

まぁ、シルナの言いたいことは分かる。

本当成長したよなぁ。特にすぐり。

一昔前の、絶対令月許さないマンだった頃のすぐりを思えば、物凄い成長だ。

そう思うと、涙ぐましくなるのも分かる。

「ね?大丈夫だって言ったでしょう?」

と、余裕の表情でぱちんとウインクするナジュである。

全くだよ。心配して損した。

まさか、こんなに二人が成長しているとはな。

「大袈裟だなー。ねー『八千代』」

「うん」

大袈裟じゃないんだよ。俺達からしたらな。

「ってか『八千代』さー、小っ恥ずかしくなるようなこと言わないでくれる?」

「僕、何か言ったっけ?」

「言ってたじゃん。自分にないものを持ってるとか何とか…」

「そうだっけ?僕、思ったことしか言ってないよ」

「あー、はいはい。鳥頭鳥頭〜」

「鳥頭…。…こけこっこ?」

平和で何より。

「ひ、ひとまずこれで…二人分の試練が終わったことになるね」

と、天音。

そうだな。

あと五人分、残っていることに変わりはないが。

ひとまず、初動はこちらの勝ち、と言ったところか。

「次が出てくるまでのインターバルが、どれくらいあるのか分かりませんが…。聖魔騎士団に協力を要請するなら、急いだ方が良いですね」

イレースが言った。

そうだな。

協力を要請すると言っても、やはり、命が懸かっていることだから…慎重に話さなければなるまい。

その為には…。

「…シルナ。ここはやっぱり、俺達で話しに行こう」

頭を下げて、協力してもらわなければならない。

ならば、学院の代表であるシルナと…その相棒である俺が行くのが、道理というものだろう。

「それまで、この白雪姫は…ナジュ、それに天音。見ててもらえるか?」

「はいはい、了解です。もし小人が出てきたら、僕達で契約しちゃいますね」

おい、早まるな。

「だって、もうイレースさんも、令月さん達も契約済みですし…」

「それはそうだけど…。出来るだけ時間を稼げ」

「努力はします」

頼れるんだか、頼れないんだか。

「安心して行ってきて。大丈夫、僕達で監視しておくから」

天音がこう言ってくれるから、かろうじて安心出来る。

まぁ、何にせよ。

「急ぐぞ、シルナ。聖魔騎士団に…」

「…」

「…?おい、シルナ?」

何故か。

シルナが、真顔で白雪姫を見つめていた。
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