神殺しのクロノスタシスⅣ
「ほう。二人共、デコ生徒手帳ブームは知ってたんですね」

「うん。クラスメイトが皆やってるから」

「俺はさー、ツキナが教えてくれたんだよね〜」

とのこと。

学生生活をエンジョイしているようで、その点は何よりだが…。

…この二人が、生徒手帳をどんな風にデコレーションしたのかは、気になるな。

どんな感じだろう?やっぱり和風な感じ?

麻の葉模様とか?

「お前達、どんな感じにデコったんだ?」

試しに、聞いてみることにした。

「え、見たい?」

「あぁ。興味はある」

「僕のはね、凄くセンス良いよ。『八千歳』も褒めてくれたから」

謎に自信があるらしい令月。
 
と、

「俺のはねー、ツキナにデコってもらったんだー。だからツキナの趣味だね」

園芸部の部長にデコってもらったと言うすぐり。

成程、あの子か…。あの、天然を絵に描いたような子…。

「見たい?」

「あぁ、まぁ見せてくれるのなら…」

「じゃあ俺のから見せてあげるよ。はい」

そう言って、すぐりが自分の生徒手帳を見せてくれた。

目を引く大根模様。

何だこれ?

「…何で大根…?」

ぺらぺら捲ってみたら、無数の野菜シールが貼ってあるし。

健康に良さそうな生徒手帳になってる。

「俺にもよく分かんない。ツキナに聞いて」

あ、そうか…。すぐりの趣味じゃなくて、ツキナって子の趣味なんだっけ。

「お前…良いのか?生徒手帳を、こんな好き勝手に改造されて…」

怒りたかったら、怒っても良いと思うぞ。

何で大根やねん!!って。

しかし、すぐりは。

「え?別にいーよ。ツキナとお揃いだし…。それに、これなら他の誰かに真似されるってこともなくない?」

それはまぁ、確かに。

他にも大根趣味の生徒がいるとは、とても思えないし。

よく売ってたなぁこんな生地。

買う方も買う方だが、売る方も売る方だ。

「すぐりの生徒手帳は、匂いまではつけなかったんだな」

軽く匂いを嗅いでみるが、香水や香り袋の匂いはしない。

ん?でも微かに…土みたいな匂いがしなくもないが。

それは多分、すぐりが園芸部だからだろう。

「そうなんだよ…。思ったように布団の匂いがつかなかったって、ツキナがしょげてた」

「…??」

布団の匂いって何だよ?

何の匂いをつけたかったんだ?

「羽久。僕のも見て良いよ」

令月が、ゴソゴソと制服の内ポケットを探った。

あぁ、令月も生徒手帳、デコったんだっけ。

今度こそ、和風のデザインなのかなぁと思ったら。

「…!?何だそれ…!?」

「良いでしょ?ご利益がありそうで」

予想の斜め上を行く、恐ろしいデザインの生徒手帳を見せられた。
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