陰謀のための結婚
「直輝です」
「直輝、さん」
心の中でも復唱して、三矢直輝だと悟った。
「どうしても聞きたくて電話しました」
「はい」
彼からなにを聞かれるのだろう。今さら娘面するなとか、財産目当てかとか、いくつか言われそうな単語が頭に浮かぶ。
けれど、彼からの質問は全く別のものだった。
「智史さんには、正式な婚約者がいるのを知っていますか」
一瞬、目の前が真っ白になった錯覚に陥り、近くにあったテーブルに手をつく。
「いえ、知りませんでした」
想像しなかったと言ったら、嘘になる。候補はたくさんいただろうとは思っていた。けれどその人を正式なと言われると、自分はどんな立場なのだろう。