雨の日のバーテンダー



私は、何も上手くいかない日々が続いた。

今日も。

「う、う、……うわああああああ(泣)」

もう、大泣き。


ポタ、ポタ、……

地面を少しずつ濡らす。

お空もどんより……


お空も、私と一緒に泣いてる。


ザァー

次第に強くなってきた雨。


「……雨、降ってきちゃったな」


仕方がなく、雨宿りすることにした。


ふと、『バーテンダー』と書かれていた看板が目に止まった。


入ってみよ。雨も降ってるし…


私は、バーテンダーと書かれたお店へと足を運んだ。


ガラス張りの扉を開けた。

チャラン、チャランと鈴の音。


「いらっしゃい」

お出迎えをしてくれたのは、イケメンのバーテンダーのお兄さんだ。


「前のお席へどうぞ」

そう言うと、私はカウンターの席に座った。

「何か、お飲み物をお選び下さい」

「ブルーレモンサワーを」

「かしこまりました」


そういうと、イケメンお兄さんは注文の品を手始めに作る。


カシャカシャカシャ


良い音。



「はい、どうぞ」

数分で、それを作り私の目の前に持ってきた。

スーっと。


「ありがとう…」


私は、1口飲む。



「お客様、お名前は?」

「美貴(みき)です」

「美貴さん。」

そう呟いたイケメンお兄さん。

「_____私のお名前は、桐南(きりな)と言います」

「はい……」

「美貴さんは、なんで泣いてたのですか?」

「え?……生きていると、色々とあるんです……」

「あの」

「はい」

「私で、良ければ美貴さんの心を癒して差し上げたいのですが」

「へ……」

このいきなりの展開は……何?!


ここで、断るには……いかず、考えていたら再びイケメンバーテンダーお兄さんが、言う。


「今日、この後お時間は」

「ありますが」

「では、私が仕事を終えるまで私の後ろの事務室にお待ちになってくださいませんか?」


「あ、はい……」


私は、最後のお酒を飲んむ。

「あの、お代は」

「あ、大丈夫です」

「でも……」

「その代わり、私が美貴さんを癒して差し上げます。それで、お代はいりません。
まぁ、僕の奢りです」

「あ、ありがとうございます」


そういうと、私はイケメンバーテンダーお兄さん……桐南さんに案内された事務室で、待つことにした。







「_____お待たせしてすみません」

「いえ、大丈夫です」


桐南さんは、私の隣に座る。

すると……

桐南さんは、私を包んでくれた。


「え……!」

「よく、頑張りましたね」

そう言って、よしよしと私の頭を撫でてくれた。

「……桐南……さん」

「美貴さんは、充分すぎるぐらい頑張っています。私に体を預けて、甘えてください」

私は、止まっていた涙を流した。

それを、受け止めるぐらい優しく包んでくれた。


泣いてる時は、ずっと包んでくれた桐南さん。


それから、私は落ち着きを取り戻した。


「……すみません、ありがとうございました」

「いえいえ、美貴さん?貴方を私にくださいませんか?」

「え!」

「美貴さんの支えになりたくて……ダメですか?」

「ダメじゃないです……お、お願いします」

「はい!ずっと美貴さんのお供になりますねっ」

ニコッと微笑んだ桐南さんに、ドリキとした。


「今日から、宜しくお願いします!美貴さん」

「こちらこそ!桐南さん」


雨の日の偶然に出会った心優しいイケメンバーテンダーお兄さん。


雨の日も悪くない。

そう思えた日だった。




END🌧



< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

いつか、あの人を愛した俺に……伝えたいこと
緑Miya/著

総文字数/300

ノンフィクション・実話1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
俺(私)を、見つけてくれてありがとう。 俺を愛してくれて……ありがとう。 「最後まで、愛せなくて……ごめん」 あの人を、今隣に居る彼女に伝えたい。 「幸せにしろよ」と。
「……なんで、私の素を見てくれないの?!」
緑Miya/著

総文字数/1,469

ノンフィクション・実話6ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
【お前なんか】の詳しく書いたものです。 (内容すべて実話で、物語に出て来る名前は一切関係ありません)
表紙を見る 表紙を閉じる
とある町娘は、1人暗い路地裏を歩いていた。 噂によると、1人で暗い路地裏を通ると〝吸血鬼〟が、現れるという噂が耳に入った。 町娘は、吸血鬼が好きで会いたくて仕方なく早々噂を聞きつけて暗い路地裏に歩いているのだ。 本で読んだ、吸血鬼は朝が苦手で太陽に浴びると溶けてしまう。 もうひとつは、人間の生き血を吸って生きているとか。 そんなお話だった。 だけど、話では朝でも平気で?太陽に照らされても溶けない?それに、人の生き血を吸わない? 吸血鬼好きには、気になる内容だよねっ! すると、 向かいから誰かが歩いてきた。 その人も私に気づいたらしく驚いている。 どんどん近づいてくるその人。 え!い、イケメン…… 肌白くでもないごく普通の人間だった。 「女性1人でここにいてはいけないよ?」と、言われ 私は、「え!」となった。 その人は私を抱えて路地裏から出た。 「危ないところだったよ?もう、ダメだからね?女性1人で路地裏を歩いちゃ」 「はい。……ごめんなさい」 「分かればいいんだよ。では、私はこれで」 そういうと、私から立ち去って行った。 少しの間その人に見惚れていた。 ……え、かなりの距離を飛んだような。 今の……なんだったの? ほんとに……人間? 私は、その人が気になりすぎて吸血鬼探しではなくなってしまった。 その人が〝吸血鬼〟とも知らずに_____ 私は、その人の跡を負った。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop