もふもふ、はじめました。
 何度も嗚咽をして泣きじゃくる私を悲しそうに見つめて、岸くんは大きな手を頭に当てるとそっと胸に抱き寄せてくれた。

 吉住課長とは違う、匂い。お日様を浴びた、お布団みたいな匂いがする。

「大丈夫……じゃないですよね。とりあえず……僕の家が近くなので移動しましょう」

 深く考えずに家まで戻ろうとしてしまったけれど、私のマンションにはきっと車で先回りした吉住課長が待っている……そう思った私は彼に会いたくない一心で、大人しくコクンと頷いた。

「すみません。散らかってるんですけど、入ってください」

 岸くんは、ずっと俯き涙の止まらない私を部屋の中央にある大きなソファに座らせると、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを出し、私の前にあるテーブルに置いてくれた。

「……何があったか。聞いて良いですか?」

 そっと隣に腰掛けて顔を覗き込むと、彼は優しく問いかけてくれた。

 私は、ぽつりぽつりと訳を話した。

 何度か短く質問をする以外は、岸くんは黙ったまま、とりとめのない私の話を聞いてくれていた。

「なるほど。同じ部屋に従姉妹、ですか……うーん。これは、如月さんは聞いたらちょっと嫌な思いをするかもしれないんですけど、ええっと……」
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