もふもふ、はじめました。
 慌てて着替えを終えると、もうこのフロアには枝野さんと私しか残っていない。そう思い込んでいたので、前を見ずに進み全く予期せずドンっと誰かの胸にぶつかり、慌てて謝った。

「あ、すみません。……あ、あれ? 吉住課長?」

 私の仕事終わりを待っていてくれているはずの、吉住課長だ。海外事業部はもう灯りが消えていたから。きっと、彼は近くのカフェででも待っていてくれているのかなと思っていた。

「なんでだ」

 見上げると、とても険しい顔。眉が寄っていて、いかにも自分は不機嫌ですって言っているみたいだ。

「え?」

「なんであいつと食事の約束をした?」

 その綺麗な顔にある表情は固くて、とてもここで冗談なんて言えそうになかった。
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