もふもふ、はじめました。

突然の大雨

「わー、本当に今日は楽しかったね」

 新人歓迎会でほろ酔いの私は、酔っ払い特有の同じ話を繰り返すモードに入っている。

「はい。僕もすごく楽しかったです!」

 岸くんは、面倒くさがらずにその度に嬉しそうにうんうんと頷いてくれる。本当に、可愛くて良い子だなぁ。

 最寄り駅の改札を出て、すぐ後を着いてきてくれた岸くんに振り返って尋ねる。

「えっと、岸くんてどっち方向?」

「あの、もう暗いですし。もし、如月さんが嫌じゃなかったら家まで送りたいです」

 ヒールを履いた私よりもかなり背が高めの岸くんは、今夜の主役なだから、かなりお酒を飲まされていた。

 うちの課は営業さんが多いだけあって、仕事で飲むことが多いから、自分の会社の飲み会はほぼ一次会で解散することが多い。

 明日も仕事だし、きっと岸くんも早く帰って寝たいんじゃないかな。

「あ、ありがとう。でも、近いから大丈夫だよ?」

 私が首を傾げて遠慮しても、彼は可愛い顔をしかめてぶんぶんと首を振った。

「今夜、如月さんに何かあったら、僕自分を許せなくなりそうなんでお願いします。送らせてください」

「大げさだなあ、本当に大丈夫なのに」

 ゆっくり進行方向に歩き出した私に、嬉しそうに着いて来てくれる。その頭の上にある大きいお耳を見てしまうと、岸くん連れて夜の散歩に行っているみたいでちょっと笑ってしまった。
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