もふもふ、はじめました。
 黒いコートを羽織った、長身のすらりとした黒猫獣人が待っていた。

 枝野さんが、驚く私の顔を見て不思議そうにしている。そうだよね。何の接点もなさそうな、二人ですもんね。

「すまない。少し聞きたいことがあるから、今良いか?」

 吉住課長の綺麗な顔は、不機嫌に顰められている。

 枝野さんに軽く両手を合わせてすまなそうな顔をすると、空気を読んで何も言わずに先に帰ってくれた。

「吉住課長、どうしました?」

「……なんで、枝野と寿司に行くことになってる。社交辞令じゃなかったのか」

 駆け寄る私に、彼はムッとした顔で言い返す。

「偶然。金曜の夜にお互い空いてたので……」

 言い訳にならない言い訳をしようとした私に、彼は畳みかけるように言った。

「僕も、空いてるんだが?」

「それは知りませんでした」

「ご飯なら、僕と行こう。寿司でも、なんでも」

 急に駅に向かって歩き出した吉住課長に私は慌てて着いて行った。
< 38 / 120 >

この作品をシェア

pagetop