もふもふ、はじめました。
 かおる。確かに吉住課長のフルネームは吉住薫……だったはず。え? ええ? 部屋に女の人?

 何か、誤解があったかもしれない、と思ってもう一度番号を確認してかけ直したけど、繋がらない。

 ……え? もしかして、着信拒否された?

 さっきまでの浮かれた気持ちが嘘みたいに、ひやりとした空気が私を冷やしていく。

「からかわれた……のかなぁ」

 はあっと、大きく溜め息をついた。休日の昼間の部屋の女の人。それに、お風呂に入っているって言ってた。

 もしかして。その人と約束があって、出張って言っていたのも嘘? あの、照れた顔も真剣な目も、嘘だったのかなぁ。

 その日の夜は、何度眠ろうとしても、どうしても眠れなかった。

 吉住課長。彼氏にフラれたばかりの私をからかって、面白かったのかな。
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