もふもふ、はじめました。
驚きに目を瞬かせる私に、彼は目を細めてこちらへと近づいて来る。黒くて長い尻尾で、軽く足を叩かれた。
「……今夜も、飲んできたのか。そろそろ僕に、連絡先を教えてくれないか。このまま、待ちぼうけになるのかと思った」
「えっと。もしかして、ずっと待ってらっしゃったんですか?」
「……土曜日。出張前に、あの慌ただしい別れ方だぞ。海外出張から帰って来て。すぐに君に会いたいと思っても、全く不思議ではないだろう」
同じマンションに住む人は通り過ぎざまに、入り口で立ったまま話している私と吉住課長の二人を不思議そうな顔をして見て去っていく。
「あ、あの、吉住課長。ここではなんですので。良かったら、部屋に上がってください」
慌てて、縺れる指を落ち着かせて。バッグから鍵を取り出した。エレベーターのボタンを、急いで押す。
なんで。なんで? 彼女が居る人なら、出張から帰ったらそちらに優先して行くはず。なんで、私のところに来てくれたんだろう?
「……今日は、営業一課は飲み会だったのか?」
「えっと。そういう訳では……ないです……」
エレベーターの中で私の返事を聞いた不機嫌そうな課長は、それ以上聞かず、ただそうかとだけ頷いた。
「……今夜も、飲んできたのか。そろそろ僕に、連絡先を教えてくれないか。このまま、待ちぼうけになるのかと思った」
「えっと。もしかして、ずっと待ってらっしゃったんですか?」
「……土曜日。出張前に、あの慌ただしい別れ方だぞ。海外出張から帰って来て。すぐに君に会いたいと思っても、全く不思議ではないだろう」
同じマンションに住む人は通り過ぎざまに、入り口で立ったまま話している私と吉住課長の二人を不思議そうな顔をして見て去っていく。
「あ、あの、吉住課長。ここではなんですので。良かったら、部屋に上がってください」
慌てて、縺れる指を落ち着かせて。バッグから鍵を取り出した。エレベーターのボタンを、急いで押す。
なんで。なんで? 彼女が居る人なら、出張から帰ったらそちらに優先して行くはず。なんで、私のところに来てくれたんだろう?
「……今日は、営業一課は飲み会だったのか?」
「えっと。そういう訳では……ないです……」
エレベーターの中で私の返事を聞いた不機嫌そうな課長は、それ以上聞かず、ただそうかとだけ頷いた。