もふもふ、はじめました。
 私の涙を、彼は何も言わずにそのざらっとした舌で舐めとると、力一杯押し返そうとしている事なんて、物ともせずにぎゅっと強く抱きしめた。

「気が付かなくて、悪かった。あれは、従姉妹だよ。田舎から遊びに来ていて、僕の部屋を体の良い宿代わりに使っているだけだ。どうせ、その間の何日間かを出張する事にまなるし。まあ良いかと思って、部屋を貸したんだが。そんな悪戯するとは……夢にも思わなかったな」

「いとこ……?」

 思わぬ展開に、目を瞬かせた私の唇をぺろっと舐めて満足そうに笑った。

「あの時に、僕が帰ってからもスマートフォンを、ずっと気にしていたから。小さな悪戯のつもりだったんだろう。着信履歴も消すなんて……タチが悪い。でも、なんでまた掛けてくれなかったんだ?」

「……その後、電話しても……もう繋がらなかったんです……」

「……着信拒否か、なるほどな。通りで」

 グルルルと、喉の奥で音がする。敵を威嚇する時の、獣のように。

「……彼女ではないんですか?」

「ああ……僕はあれには、親戚以上の気持ちは持ち合わせてないな」

 ちゅっと音をさせて私の唇にキスを落とすと、吉住課長は私の体をもう一回。ぎゅっと強く抱いた。
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