もふもふ、はじめました。

さみしい

 『さみしい』と、黒猫が震えているスタンプが届いた。

 くすっと、笑ってしまう。吉住課長は連絡のまめな人だ。役職付きで多忙なはずなんだけど。こうやって夜遅い残業の合間にも、連絡してきてくれたりする。

 何日間か海外出張があったせいか。彼は遅れている正規の業務をしなきゃいけないなどで、帰って来たあの日以来まだ会えていない。

「如月さん? もう駅着きましたよ」

 帰りの電車の隣の席に座っていた岸くんが、肩を叩いてくれる。あの後、すぐに葵に連絡を取ったら「来週の金曜なら会っても良い」と返事が返ってきた。

 お店をどうするとか時間などを相談した流れで、岸くんと一緒に帰ることになったのだ。

「あ、ありがとう」

 慌てて、電車から降りる。いつもより少し遅いだけの時間なんだけど。退勤ラッシュはもう過ぎてしまっているのか、駅の中は閑散としている。

「……あの時。言っていた好きな人と、仲直りしたんですね」
< 76 / 120 >

この作品をシェア

pagetop