もふもふ、はじめました。
 私のマンションへと帰る道で隣を歩きながら、いつもの可愛い笑顔で微笑むから、ドキリとした。

 そうだ。浮かれていたけど、私。岸くんに告白されていたんだった。

 こういう時って、どういう風に言えば良いんだろう。

 困った表情をしてしまった私に、彼は全部わかっているとばかりにもう一回微笑んでくれる。

「良かったですね。僕は如月さんが笑っていてくれるのが、それが嬉しいです……もう。何も言わなくても良いですよ」
「岸くん……ありがとう」

 ここで謝るのも、何だか違う気がした。マンションに着いてから別れ際に、送ってくれた岸くんはいつも通り笑顔で手を振ってくれる。

 自分の部屋に入って。何にも、そう何にも悪いことはしていないはずなんだけど、良くわからない罪悪感が押し寄せてくる。

 不用意に期待させてしまったのかなとか、今日笑顔で去って行ってくれた岸くんの心中を思うと、何にも考えられなくなった。

 とりあえずコート脱いだりお風呂に入ったりして、身支度を済ませるとスマートフォンの着信音が鳴った。

 吉住課長だ。
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