もふもふ、はじめました。
 コース料理を予約時に頼んでいたので、目の前には美味しそうな料理が並んでいる。話の向きによっては、無駄にしなければならないと思うと、胸が痛んだ。

「……日向さん、今日来て頂いた用件ですけど」

 早速、話を切り出そうとする私に葵はニヤニヤしながら話を遮った。

「待てよ。飲み物も来ていないのに、本題に入るなんて不躾だろう。乾杯くらいしようぜ」

 こんな人と乾杯なんか、したくないんだけど。何か言いたくなる気持ちをグッと我慢して、私は頷いた。

「よし。乾杯しようぜ」

 早々に運ばれて来た冷えたジョッキを持って、三人で乾杯をする。私も岸くんも力ない乾杯だ。

 こんな話し合いで盛り上がらないのは、当たり前なんだけど。

「……日向さん。もう東堂商事に嫌がらせするのは、やめてもらって良いですか」

「俺は嫌がらせなんてしたつもりはないけど。担当者の営業が気に入らないから、取引先を変える。良くあることだろ?」

「……では。どうしたら、取引を再開してもらうことが出来ますか?」
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