もふもふ、はじめました。
「……お前が僕を呼び出すなんて、珍しいな。ここに今岸が居る、ということは、千世の話だな?」

「話が、早くて助かるよ……早速だが、日向物産の日向葵、潰すぞ」

 物騒な言葉に僕は眉を上げて枝野を見た。大真面目な顔をして、どう考えても、冗談を言っている雰囲気じゃない。

「……理由が聞きたい。何があった?」

「取引を断られるまでは、まだ良い。こちらの力不足だったと、そう思おう。だが、それを脅しのネタにして、女性を弄ぼうとするなど万死に値する」

 無表情で枝野は言い切った。まだその燃え盛る感情そのままに、相手を怒鳴りつける程で済む怒りであるなら、大したことはない。

 本気の怒りが生まれた時、人は冷静になる。渦巻く感情の渦は冷え渡り、その視線はまるで氷のようだ。

「……なるほど。何があったか、わかった。全面的に協力しよう。どうする?」

 僕の千世を弄ぶ、ね。

 ふうんと僕は目を細めた。
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