もふもふ、はじめました。
 どうやら。最近取引先の社長のお嬢様と目出度く婚約なさったらしい。

 そのために千世と別れて……か。千世と別れてくれて感謝しかないが、その上で彼女を弄ぼうとするなど、どこまでも腐っている。

「非常に残念だが、縁談も破談にして次期社長の座も降りてもらう。この男は、それだけのことをした」

「……自業自得だな。本当に可哀想だが」

 枝野は、僕に向けていたスマホをくるっと回す。

 二人向かい合って、お互いに笑った。日向葵はそうとは知らず、敵に回してはならない者を敵にした。

 どんな相手にだって剣を向けるなら、自分も切られる覚悟をすべきだ。例え刃が思わぬ方向から来たって、それは覚悟の上だろ?
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