もふもふ、はじめました。

ため息

　それのメッセージが届いたのは、吉住課長が家に来ていた時で。

　金曜日の夜、二人ともすっかりくつろいでいた。

　仕事終わりにシャワーを浴びた後。私が上目遣いでお願いしたら仕方なさそうな顔をして獣化してくれていたから、私はベッドの上でそのもふもふを堪能していた。

「着信音が鳴ったぞ」

「知ってますー」

　背中から抱きついて、私は滑らかな毛皮に顔を埋めていた。顔を近づけると、より吉住課長の濃い匂いがする。

　週末まで、なんとか乗り切った私には格別のご褒美だ。漆黒の毛はふわふわだし滑らか、本当に気持ちが良くて永遠にこうしていたい。

「……千世、飲み物が飲みたい。ちょっと人化する」

　私が離れるとのそのそと疲れ切った様子で下着のある脱衣所へと歩いていく。私はそれを見ながら、充電しているスマートフォンを取った。

　視線を落として画面を立ち上げると、例の元彼葵からのメッセージだ。

「え……？」

　彼からのメッセージを読んて、目を疑った。そこにはこの前あったことのへ謝罪、もう二度と近づかないのでどうか許して欲しいなどということが長文で綴られていた。

「どうした？　千世」

　吉住課長が黒い下着だけを身につけて、こちらに戻って来た。

　電気を点けていて部屋も明るい中、程よい肉付きの筋肉質な上半身が見えて恥ずかしくなった私は目を逸らした。

「……あの、この前の元彼から連絡が来て……」

　私はスマートフォンを、そのまま吉住課長に渡した。彼はそれを見てから、ふうんと興味なさそうに呟いた。
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