腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 その声が先生のものと思えなくて顔を上げる。

(あれ、今の声、誰? 先生?)

 悩む私の目の前で、先生はいつも通り優しく微笑んだ。

「いいよ、教えてあげる」
「へ?」

「そんなに僕のことが知りたいなら、教えてあげる」

(それは願ったり、叶ったりと言うやつですが……)

 でも突然どうして……?
 そう思って、先生を見ると、先生は微笑んで私の頬を撫でた。

「その代わり、条件があるんだ」
「条件」

 繰り返した私に、にっこり笑ったまま先生が頷いた。
 なんですか? と聞いた時、先生はもう一度、口を開く。


「知ったらもう引き返させてあげない」

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