腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 それは、考えてもいなかった言葉で。

「……へ?」
「ももは、それでいいんだね」

 引き返すって、どこに引き返すつもりだろう。

 私は先生と『進みたい』って思ってるのに。
 先生と家庭を作りたい。子どもだって……。

「大丈夫です。優しい先生のことだから私のことまで心配してくれてるんでしょ?」

 私が言うと、先生はまた微笑む。

「分かったよ、もも」

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