腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

「好きな奴前に何もしないなんて、俺なら考えられねーけど」

 斗真が呟き、私は泣きそうになる。
 リク先生は、私のこと好きじゃないのかな? これまで幾度となくよぎった不安が胸を締め付ける。

 いや、でも、私の魅力が美奈さんくらいあればたとえ絶食系でもどうにかなったかもしれない。

 せめて私が経験豊富ならもっと積極的に行けただろうか。

(知識だけは豊富なんだけどなぁ……)

 『知識と経験は別物』とはこういうことらしい。私はポツリと呟く。

「いろいろ勉強したのに……。ストレッチも頑張ってるし」
「ストレッチってなんのために」

「エッチするときの体勢って40以上あるんでしょ? 美奈さんに教えてもらった」

 そう言うと、斗真は飲んでいたお茶を吹きだした。
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