腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
慌てて走るようにリビングに行くと、リビングの明かりはついていて、先生がテーブルで分厚い本を読んでいた。
「おはよう。しっかり眠れた?」
そう優しく微笑む先生を見て、私は頭を抱える。
先生は今日は家にいたのだ。
「先生と二人の時間だったのに! 私はなんてもったいないことを……!」
「あはは」
「笑い事じゃないですよぉ……! なんで起こしてくれなかったんですか!」
「ももの寝顔が間近で見られて僕はラッキーだったよ」
そう言って、先生はまた優しく微笑む。
その笑顔に絆されそうになったけど、私は首を振り、先生を睨む。
先生、酷い。
私は先生ともっと話したかった。
「私は先生と話して、もっと……!」
いつのまにかぐっと手を握り締めている。「もっと、夫婦っぽいこともしたかったんです!」
思わず私が叫ぶと同時、先生は驚いた顔をして私を見ていた。
(なんかすっごい恥ずかしい! ええい、でも、もうここまで来たら言うしかない!)