甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 案内されたのは、東京タワーがよく見える窓際の席だった。
「よくこんな特等席が空いてたな。ついてるよ」
 と、島内さんは上機嫌。

 わたしにとっては最悪の席……と思ったけれど、さすがに口には出さず、ただ微笑んでみせた。

 ライトアップされた東京タワー。
 あの日もそうだった。
 夕焼けを背景にそびえ立つタワーに、ちょうど灯りが点ったとき……
 
「さ、酒が来たよ。乾杯しよう」
 島内さんに声をかけられて、我にかえる。
 気づいたらもうテーブルには、「食前酒に」と彼が頼んだキールがサーブされている。
 窓の外のタワーと同じ、ルビー色の……

 彼は「植田さんとのはじめての会食に」と言いながら、グラスを合わせてくる。
 思い出に囚われてばかりいてはいけないと、わたしは自分を諌めた。
 でないと、今、一緒にいる島内さんに失礼だ。
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