甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 でも今は、心の底から恋愛はしたくなかった。
 もうあんなふうに、自分をコントロールできなくなってしまうのは耐えられない。
 それほど裕樹に失恋した傷は深かった。

 最悪の時期は脱したといえ、まだ完全に立ち直ったわけじゃない。
 ひとりで家にいたりすると、虚しい気持ちがよみがえってくる。

 よく、恋の傷は新しい恋が癒してくれるというけど。
 そんなふうにはとても考えられない。       
 自分を癒すために付き合うなんて、新しい人に失礼だと思う。
 頭が硬すぎるのかもしれないけど。
 
 まあでも……
 彼とは部署が違うし、会うのはせいぜいひと月に一度ぐらいだし。
 そのうち島内さんの気持ちも冷めるだろう。

 そう、たかを括っていたのだけれど……
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