黒曜の戦場
27.家族が怖いと思ったことはある?
「じゃあまた、夕方迎えに来るから」
咲くんはそう言って、琥珀と黒曜のブレスレットをゆるりと撫でてから、一歩遠ざかる。
咲くんに貰ったお気に入りのブレスレットは、今日も琥珀の手首でキラキラと光を反射していた。
咲くんと一緒にいる時のゆったりとした時間が好きな琥珀は、少しそれを寂しく思ってしまう。
さっきまではなんだか、近かったから。
「迎えにって……それまで咲くんはどうしている気なの?」
「すぐ隣のカフェでネーム作業してくるよ。インスピレーションも受けたし」
「……わざわざ待っててくれなくても大丈夫だからね?琥珀、ちゃんと帰れるよ?」
「そうじゃないよ」
咲くんは私の頬を人差し指の背で撫でながら、ゆるりと淡い花のように儚い笑みを見せる。
「おれが琥珀を送りたいの」
やっぱり、今日の咲くんはなんだか、変だ。
だって、さっき琥珀を攫った時だって、今だってまた……。
そしてふと、近づいてくる顔に、琥珀は「え?」と思考を停止させて。
「待ってるからね」
そう優しく囁いて、ほっぺにちゅーされた。
「あ、戻ってきた琥珀」
「なんかアイツふらふらしてんぞ」