黒曜の戦場
30.もっと聞かせて?
「いっ……!!!」
シュッと消毒されると、染み渡る痛み。
血、出てないのにっ!!!
琥珀が咲くんに連れられて来た保健室、琥珀はソファーに座らされて、床に膝をつく咲くんにシュシュッとてのひらを消毒されていました。
先生は職員室に戻っているらしく、消毒液だけちょちょいと借りまして。
授業はもう始まっているけれど、みっちょんが先生に説明しておいてくれるそうだ。
「傷付けられてたか」
「でも、アシスタントでもよく紙で手を切ったりもするから……」
「琥珀ちゃん」
真剣な、咲くんの瞳が、琥珀をじっと覗き込む。
「悪意に対して、そんな庇うようなことしちゃダメだよ」
「……悪意?」
「こういう悪意を向けてくる人は、エスカレートするんだから、早めに対処しないといけない」
ドクドクドク、琥珀の胸がまた騒ぎ出す。
これはなんのドクドクなのか、咲くんに対してなのか、それとも悪意に対しての不安なのか、わからない。
手も少し、震えている気がした。
傷が、着いているように見えないのに、痛かった。
「琥珀ちゃん」
咲くんから、笑みが消える。