ユーサネイジア ー安楽死ー



悩み過ぎて涙ぐむ善に、ワタシは話を続ける。



「体をつくるのに必要だから食べないといけない。だからこそ『いただきます』と、命や命を育てた方々、調理した方々に感謝をしてから頂くのです」

「おいしいから食べるんじゃないんだ……」

「もちろん、食べるからには美味しく頂くのが一番ですよ」



ふわりふわり、毛先の短い善の頭を撫でる。

動物を殺すこと、なんてこの歳じゃまだピンと来ていないだろうに、それでも彼は考える。

『良い事』と『悪い事』の境界線を、こうして探って覚えていく為に。



「善は、優しい子ですね」



優しい子……感情移入しすぎて難しく考えてしまう子。

『死』というものを、子供の頃はちゃんと理解が出来ない。

だからこそアリの手足をちぎったり踏みつけたり出来てしまうし、それが残酷なことだというのは経験を積んで理解していくものだ。



善はまだ、そういうことを理解出来る歳ではない。

けれど善の名前が『善い』という意味を持つことを彼は知っている。

だからこそ、善行に拘ってしまうんだろうと推測する。

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