甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》






‘警察官に話を聞こうと思ったけど、当然教えてくれないよね’
「そうだろうな」
「でも真麻は知っていると…さすが誠の妹」
‘あははっ…知ってるよ~ここの大家さんが困ったぁ、困ったぁ…ってぶつぶつ言いながら彷徨(うろつ)いてたから簡単だったよ’
「あのおばちゃんか…何て?」

紫乃ちゃんの部屋の退去手続きで二度会ったおしゃべりなおばちゃんが大家だ。

‘何をお困りですか?って聞いたらあっさり…逮捕なんてされたらうちはどうやって家賃の回収するの?って。そうでなくても先月分支払われていないんだって’
「そりゃ、続けて引き落としされますよって言えないな」
‘身柄が拘束されているという居場所がわかっているうちに弁護士たてて請求した方が、弁護士費用払ってでも確実ですよって教えてあげた’
「その通りだ、真麻。俺でもそう言う」
‘壱くん、誉めてる?’
「誉めてる」
‘でね、それで終わらず、身柄拘束理由まで聞き出したことを誉めて’
「おばちゃんが勝手に喋ったんじゃないのか?」
‘お兄ちゃんには教えないよ?’
「誠、出て行く?」
‘真麻、ごめんごめん…お前の話術で聞き出した大ニュースを聞きたい’

たっぷり間をとる真麻に呆れながら壱と小さくため息が出るが、真麻の言葉を待つ。絶対に楽しんでるよな…妹よ。
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