甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》





「紫乃、明日から起こさなくていい」
「そう?わかった…起きてるもんね…」
「紫乃のおかげで習慣になっただけ」
「…スゴイデスネ…3週間で習慣づいて…」
「えーそのカクカクした言い方も可愛らしいな…もっかい言っとく?」
「…言わへん」

たっぷりの野菜と揚げの味噌汁と納豆と卵焼き、海苔までうまい。

うまいが、毎朝起こしてもらうと紫乃が朝食を作っている。夕方もどうしても俺の仕事の方が遅いことが多い。紫乃と一緒に仕事を終えてから夕食後に続きをすることもあるが、それでも紫乃の方が料理する回数が多い。彼女は料理が好きだと言うが、紫乃一人に家事をさせるつもりでここへ呼んだわけじゃない。

だから、起こしてもらうのはやめて俺が朝食を作ろうと思う。近々他に至福の時間が来ると信じて…

「俺が起こそうか?」
「へっ?」
「海苔落ちたぞ…ふっ」
「あっ…丁重にお断りさせていただきます…」
「俺が紫乃を起こしたいって言っても?」
「余計に…ね?」
「ベッドに入ったりしないぞ?」
「…」
「その辺は信用あるだろ?」
「…うん…ごめんなさい…ちゃんと返事してないの…ズルいよね…」
「俺が好きって言ってること気にしてる?それは永遠に止められないなぁ」

紫乃が俺のことを考え、向き合ってくれていることは伝わってくるので急かさないつもりだ…今のところ。
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