甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》
follow your heart*自分の心に従え
「壱、起きて…もう起きてるでしょ?」
そう言いながらカーテンを開ける紫乃を盗み見るのが毎朝至福の日課だ。俺のギャルソンエプロンは紫乃の物になり、俺より先に当たり前に紫乃に巻きつく憎いヤツだ。
「…はよ…紫乃」
「おはよう」
パタパタとスリッパの音をさせドアを開けたまま部屋を出て行く様子をベッドから眺めていると味噌汁の香りがする。珍しく朝に味噌汁?
「ん?味噌汁?」
キッチンで紫乃越しに鍋を覗くと
「野菜が余ってきてるから、トーストを食べていたんじゃ消費できない」
チラッと俺を睨む風の紫乃の頭を撫で
「その顔も可愛らしいだけ…そそる」
と言うと真っ赤になるのが以前の紫乃と違うところだ。壱と自然に呼べるようにもなっているし全ていい傾向…だが、最後の一歩で付き合うことにイエスと言わない、紫乃。俺を起こすのも、触れずに起こすようにしているようで…警戒というよりは、今は最後の最後で自分の心を守っているように見える。