甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》





2時間近く身動きせずに眠った紫乃が、ごそごそっとタオルケットを動かし寝返りしそうになる。

「紫乃、ここソファー…落ちる」

彼女の背中を支えてから体を俺の方へ引き上げ、紫乃の頭を膝に乗せる。

「…うん…」

一応返事をしたのか?しかしまだ目を閉じたままの紫乃の呼吸に耳を澄ませる。先ほどまでの寝息とは違うので眠りが浅くなってしまったのだろう。ゆっくりと呼吸に合わせて肩から背中を繰り返し撫でると、再び呼吸は寝息に変わる。

「寝顔も可愛らしいって…たまんねぇな、紫乃…俺をどうするつもりだよ」

人を寝かしつけたことなど一度もないが、紫乃が目の前にいたら何だって出来てしまうな。寝顔を飽きることなく見つめていると、20分ほどで紫乃の瞼がピクピクと動き始めた。そっと頭を撫でると

「…ここ…?」

ゆっくりと目を薄く開けた紫乃が、まだぱっちりと開ききらぬ瞳を揺らす。

「落ちそうになったから、こっちへ引き上げた。まだいいぞ?眠れるだけ眠ればいい」
「…ありがと…壱」
「頭は?」
「大丈夫だと思う。ゆっくり起きる」
「ずっと俺の上っていうのはどう?大歓迎だが?」
「…えっと…なかなかの枕ぶりで?ありがとう?」
「ぶっ…ははっ…枕ぶりを誉めてくれたのか?ははっ…」
「キャッ…ちょ…落ちるっ」

俺が声を上げて笑うと、落ちそうになった紫乃が俺に抱きついた。

「ふっ…紫乃、今度は抱き枕か?」
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