甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》





「紫乃、いいから。珈琲いただきます」

俺がそう言うと

「紫乃、長谷川さんは俺と同類とわかったからもう大丈夫」
「正也と同類か…ある意味安心。紫乃、大事にしてもらいな」

また姉と兄が言う。

「仲いいんですね。紫乃さんもお二人に買ってもらったというコートとバッグを大切にしているようです」
「長谷川さんは、ご兄弟は?」

父親に聞かれ、そっと珈琲カップを置いた。

「兄弟はいません」
「ご両親は紫乃との結婚について、何と?」
「プロポーズが昨日なのでまだ結婚とは伝えていませんが、一緒に住んでいることは知っていて‘フラれるな’と声を揃えていましたから反対はされません」
「そうですか。うちも反対することはありません。紫乃が決めたのならそれが一番です。長谷川さん、紫乃をよろしくお願いいたします」

紫乃がよく家族と連絡を取っているおかげか、すんなりと結婚は認められた。

「で、紫乃。さっきの話、いい?」
「いいけど…」

姉に答えながら俺を見る紫乃に

「うん?俺?どうした?」

と聞く。

「お姉ちゃんがドレス貸してって…」
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