甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》





「早急と言われれば否定はしませんが、紫乃が…失礼…紫乃さんがあまりにも可愛らしいので待てなかったというところです」
「可愛らしい?」
「はい、可愛いのではなく可愛らしいんです」

俺がそう言うと

「長谷川さん…よくわかってはる。紫乃は可愛らしいんですよ。兄の正也です」

あっさりと挨拶された。よくわかっているに決まっているだろ?

「一緒に住んでいて…紫乃は迷惑かけてませんか?」

母親のその心配は無用だ。

「全く…」
「お母さん、迷惑はかけてへんけど…私、甘やかされてる」

珈琲を運んで来た紫乃が言うと

「甘やかされてたらええ。紫乃は甘やかされてなあかん」
「出た、正也の紫乃甘。長谷川さん、姉の夏乃です。正也は紫乃にあまあまなんで気をつけて下さいね」
「もう先制パンチは出されました」
「正也、あんた何言うたん?」

兄と姉が話し始める。

「こんなに早急に婚約して紫乃を何か利用しようとしてるんと違うかと聞いただけ」
「お兄ちゃん、あり得へん質問やね?壱に謝って」

おお、膨れた紫乃も可愛らしい…すかさず眼球録画をする。

「膨れた紫乃も可愛らしい…って…聞こえてますよ、長谷川さん」

声に出ていたらしい。
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