甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》






「壱、来てくれてありがとう」
「当然。もう皆、俺の家族」
「ありがとう。皆、喜んでた」
「俺も嬉しい。結婚許してもらえてよかった。自分が思った以上に緊張してたんだな」
「花?」
「そう。隣の花に気づいた時には驚いた」
「私も気づいていたのに…ごめんね…壱のタイミングがあるのかと思って言わなかった」
「喜んでもらえたからいい」
「あれ、どうしたの?すごく豪華なアレンジメントだったね」
「講演会の会場がホテルだったから、始まる前に注文して作ってもらった」
「やっぱり完璧」
「紫乃が完璧だろ?Tシャツとスウェットがあってよかった」
「もしかしたら食事するかもって思っただけ」
「あれだけの寿司とか用意してもらっていて、俺たちが今日は帰るって言ったらどうなってたんだろうな」
「近所の人と宴会したんじゃない?」
「本人不在の祝いか…ふっ…それでも盛り上がっていそうだな」

紫乃の実家を出て駅までの道を、絶え間なく話しながら手を繋いで歩く。駅が近くなり明るくなる、その一歩手前で足を止めた。

「紫乃」
「うん?」

俺を見上げた彼女の唇にチュッと口づける。

「こうしてずっといっぱい話して過ごそうな」
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