甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》







「うん。これからのこと…思うだけじゃなくってこうして言ってくれる壱が好き」

‘チュッと触れるだけのキスでは満足できない、もっと’という気持ちを隠した紫乃の言葉に応えて、再び唇を重ねる。

ゆっくりと唇の柔らかさがわかるように重ね合わせた唇を僅かに動かし角度を変える。唇をしっかりと重ねたまま舌でツーっと彼女の下唇を舐める。深くなる口づけの予感に少し体を引いた紫乃の後頭部を手のひらで支えるように、反対の腕はぐるりとウエストに回して引き寄せた。

ここは外だと抗議したいのだろう…口を開きかけた紫乃の口内に遠慮なく舌を入れると宙ぶらりんの舌を絡め取る。すっかり覚えた歯列を舌でなぞりながら、チワワたちと戯れる、ここでしか見られない紫乃を脳内再生する。チワワより断然可愛らしい紫乃の上顎を舐め…ぅん…感じ始めた彼女の舌を強く吸う…っん…ゆっくりと唇を離しながらレロッと濡れた唇を舐める。

「もぉ…」
「照れるのも可愛らしい」

ペロッ…

「っ…人が来るって」
「ん、行こうか」

これからの人生で、紫乃と二人で何度も来るであろう駅の改札を初めて二人で通った。
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