甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》
今日も仕事をすると言っても戻った時には11時だった。
「壱、先に下に行っててくれる?すぐに私も仕事するけど…」
そう言いながらキッチンに入る紫乃に
「昼か?カフェに行けばいいだろ?」
「朝もパンだったからご飯だけ炊いていい?」
「そうか、任せる。ゆっくり来い。下、まだ寒いから」
「うん、ありがとう」
昼を任せ、パソコン2台を持って降りる。オフィスのドアに手を掛けたとき
「「おはよう、壱」」
「声揃えて…何ですか…榊原さん聖さん」
6階からわざわざ上がって来たらしい二人を一瞥してドアを開けると二人も入ってくる。
「昨日はどうも…」
一応伝えつつ暖房を‘速暖’でつけ、紫乃の足元のヒーターもONにする。
「壱の車が入って来るのが見えたから」
「冷やかしに来てみた」
分担して喋るなよ。多分めちゃくちゃ忙しいから息抜きに来たんだろうが…
「紫乃さんは?」
「いや、来るだろ。玲央も今壱があそこのヒーターつけたの見ただろ?」
「なるほど」
二人で喋るならここでなくていいだろうが…