甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》





「それカップごと持って行っていいんで帰って」

俺がシッシと手を振ると

「おっ…壱。指輪、見せてくれ。昨日、結婚指輪にしてはちょっとごつめでカッコいいと思ってたんだ」

榊原さんが俺の左手を掴んだ。

「ごめーん、遅くなってしまった…って…手を取り合って?お邪魔しましたか?」

俺しかいないと思っていたところ、少し驚いて一瞬立ち止まった紫乃が俺と榊原さんを見ていたずらに笑う。

「紫乃さん、おはよう…もうこんにちは、か…珈琲入れたところだけど飲む?」
「お客様に入れてもらって…いただきます」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます、聖さん。あっ、壱ありがとう。ヒーターついてる」
「ん、って…いつまで手を握ってるんですか?」
「指輪見せてくれって…この幅広いのいいな。紫乃さんも見せて」
「見せなくていいぞ」
「触らないから」
「当たり前でしょうが」

俺と榊原さんが言い合ってると

「紫乃さん、芸能人の記者会見みたいに顔の横で見せてやってよ、玲央に」

聖さんがいいことを言った。それはぜひ見てみたい。眼球録画後永久保存版間違いない。
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