甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》






ビールで乾杯した紫乃のグラスの中身を俺が飲み、すぐにシンクで濯ぐ。

「白ワイン、ある?」
「冷えてるわよ。先に持ってくれば良かったわね」

ワインを持って戻ると、父さんがすぐに言う。

「壱、そのグラスにワイン入れるつもりか?」
「家で最近こんな感じ。紫乃がワイングラスを倒しそうって言うから」
「そうか、家のようにしてくれていいいが…紫乃ちゃん、うちにもワイングラスはあるよ?」
「ふふっ、知ってます。でもテーブルより、こたつってさらにワイングラスを倒しそうだからこのままいただきます。ありがとう、壱」
「ん」
「私の取り皿…お行儀悪く欲張りな人のお皿なの…見て」
「母さんが喜ぶ皿だろ」
「ふふっ…いただきます」

紫乃は二回目のいただきますを言い、たたきごぼうを口にする。続けて紅白なますを食べてワインを一口飲むと

「美味しいね。この美味しさを知ってる壱の舌が怖いな…毎日の食事大丈夫?お義母さんの料理すごく美味しいんだけど?」

真面目に俺に聞き、父さんと母さんを歓喜させる。誠がよく言う‘これが紫乃’だ。
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