甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》
「紫乃の大根の炊いたんが最高だが?」
「もぉ…どこでもそればっかり言うから、最近‘大根の炊いたん’とか‘菜っ葉の炊いたん’とか普通にまこちゃんたちが言ってるんやけど?」
「俺‘炊いたん’好き」
「これも‘炊いたん’やね?」
「これは煮しめ。紫乃が炊かないと‘炊いたん’とは言えない」
私たちが話すのを聞きながら、お義父さんたちはお酌をし合っている。
「面白いペースよね?壱と紫乃ちゃんの会話は」
「そうですか?」
「壱よりワンテンポ紫乃ちゃんが遅いけど、それでもリズムよく耳に優しい会話が続くようね」
「紫乃、照れんな」
「えっ…照れてない」
「可愛らしく照れてた」
「そう言って今照れさせようとしてるね?」
「そうなのか?」
「壱、無意識?そうだと思うよ?」
「そうか…ついに俺より紫乃の方が俺のことを理解し始めたか…」
壱がそう言うと、お義父さんたちが声を上げて笑う。
「いいね、うちは子どもが壱だけだからね。こういう食事はなかったから楽しいね、母さん」
「とっても。娘がいるっていいわね、お父さん」
そう言われると照れるよ。