甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》






私の仕事へ希望は、座りっぱなしが嫌だということ。ペットショップはその点はとてもよかった。

派遣登録するとすぐに販売員というのが目の前に並ぶ。百貨店内の食品、服、靴、香水…あらゆる店舗で派遣社員募集がある。なるほど、百貨店は派遣社員が多いのか…とりあえず販売員かなぁと派遣会社からのメールを見ていると、レンタルグリーンの会社が最後のページに出てきた。仕事内容は事務と配送補助。事務もするが大きな観葉植物の配達について行ったり、行かなくても車への積み込みや植物の世話等をするようだ。

百貨店で客待ちをして立っているより、こっちの動きの方がいいな。それに百貨店での自分より、この写真のジャンパーを着ている自分の方が想像できる。早速派遣会社に連絡を入れて、無事年明けから3ヶ月の派遣が決まった。

‘よかったね、真麻ちゃん。私も真麻ちゃんが観葉植物の鉢を抱えて車へ乗せたり下ろしたりしているところが想像できる’
「でしょ?ブランドの服を着てフロアに立つ自分は想像出来なかった」
‘私、百貨店へ就職していたけど、真麻ちゃんにはオススメしないよ’
「女が多くてバチバチ?」
‘当たり…ふふっ…もうまこちゃんに言った?’
「さっき言った」
‘じゃあ、私も壱に報告するね’
「うん…」
‘何の報告してくれるんだ?紫乃?’
「壱くん出たー近い近い…見てなくてもわかる、あははっ。紫乃ちゃん、壱くんに変わって。自分で報告する」
‘真麻?何?’
「壱くん、私お仕事決まりましたー」
‘そ’
「えぇぇ…一言も返さず一文字?」
‘どこ?’
「やっと二文字…レンタルグリーンの会社だよ、派遣だけどね」
‘いいんじゃね?派遣だって仕事に変わりないんだから’
「ありがとう、壱くん。就職祝いお願いね」

ブチッ…はっ?切れた?切ったの?紫乃ちゃんと私の電話だよ?
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