甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》




ピンポーン…

「壱、開けて」
「…榊原さんだね」
「壱と紫乃さんに頼みがある」
「?」

無視して一口お茶を飲んだ壱だが、チッっと盛大な舌打ちをしてから席を立った。

「何ですか?」
「ご機嫌斜め?」
「榊原さんのせいです」
「紫乃さんは?」
「紫乃が何?」
「二人に頼みたいことがあって来た」

榊原さんは壱を宥めるように肩をポンポンと叩きながら入ってくると

「あ…食事中だったか?」
「時間考えると普通にそうでしょうね」
「まだ機嫌悪いのか?おにぎり、うまそう」
「食事中なんで出直してください」
「って、旦那は言ってるけど…紫乃さん俺の頼みを聞いてくれる?」

と吉○亮に似た顔を私に向けた。うん、似てる…ずっと誰かに似てると思っていて…でもわからなくて、結婚式の時におばあちゃんと撮った写真がお兄ちゃんから送ってきたときに気づいたんだ。
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