甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》





紫乃が悩みながら父さんへのプレゼントに決めたのは、機能性ソックス10足だった。靴下をプレゼントするのは良くないと迷っていたが、身内だからいいと俺が言うと、足裏のサポート力を高める特許取得ピンポイント圧着だとか、左右異なった設計が足全体にフィット感を与えまめを徹底的に予防するだとか、新素材でムレないだとか、足の専門家が科学的に設計しただとか、土踏まずアーチサポート、足首サポート…最近ちょっとしたハイキングをする父さんへ、必要以上と思われる高機能のソックスを10足も詰め合わせている。紫乃が選んで満足なのが一番だ。

さあ、紫乃のものへ…と思うと雪乃のものが見たいと言う。

「花園からも先取りサイズでもらってるだろ?」
「そうだね…」
「でもせっかく来たから、紫乃の好みで買うか?」
「いいの?」
「いい。ただし制限時間30分。その中でいくら買ってもいい」
「よしっ」

胸の前で小さくガッツポーズを見せる可愛らしい紫乃を眼球録画しながら、雪乃のものはたくさんあるからいらないと言い切らなかった自分を誉める。

ワンピースとブルマセット、ロンパースと帽子セットを好きな柄で選んだ紫乃は

「今日はこれで満足。ありがとう、壱」

と俺の腕に手を添えて微笑む。

「ん、またいつでも来ればいい。紫乃のもの見るぞ」

俺が片手でベビーカーを押し、片手で紫乃の腰を抱くと紫乃が可愛らしく照れた。

< 338 / 348 >

この作品をシェア

pagetop